2008年冬 第23回データベース特別研究会

〜システム開発の動向と2007年の総括〜

経営力を強化するIT活用方法の研究

2008年度冬季特別開催セミナー:終了報告

去る2008年2月8日(金)、アイビーホール青学会館にて「冬期特別開催セミナー」を開催し、ご好評のうちに閉幕いたしました。

会場では各講演の終了時に多数の質疑が行われ、参加した方々は有意義な情報交換の時間を過ごされていたようでした。

セミナー内容

【第1部】第23回データベース特別研究会 〜システム開発の動向と2007年の総括〜

株式会社データ総研
椿 正明

現在のシステム開発の動向について、いくつかのトピックを取り上げて解説した。

  • ICタグは様々な目的で、実用化が進められている。問題も生じているが、今後も進歩は進むだろう。
  • 仮想化や、Web2.0に関する事例が出始めている。ただし、その利用には内容の理解も必要だろう。
  • SCMのリアルタイム化、CRMの活用が進んでいる。
  • ERPは、導入後の環境変化などへの対応が課題となっている。
  • BIが普及するにつれて、その目的は戦術から戦略策定へとシフトしている。戦略的BIには経営層向けのレポートなどの作成、戦術的BIにはリアルタイム性やBPMとの連携が求められてきている。
  • SOAの導入は、今後もユーザー・ベンダー双方で活発に続くだろう。ただし、SOAに必要な、データの品質確保には継続的に高いレベルの人的リソースが必要とされる。また、EDWのアーキテクチャや、組織のシステム・業務理解への方向付けも考慮すべきである。
  • SaaSは、導入の成功とともに、セールスフォースなど先行SaaSベンダーだけでなく様々な組織が提供に力を入れており、適用事例は増えるだろう。
  • データとプロセスの可視化は、複雑化したシステムの管理やJ-SOX法対応にも必要だろう。
  • IT部門の活躍への期待が高まっている。ビジネスを理解する人の育成と体制の確立を実現すべきである。

【第2部】経営力を強化するIT活用方法の研究
1. 世界のデータ管理手法の動向と先進企業の事例紹介

株式会社データ総研
黒澤 基博、藤原 紀章

2007年秋にロンドンで行われた国際カンファレンスで発表された事例について説明した。

  • 米国有力地方銀行では、データ流通過程の各所で整合性を監視し、要請された規制に対応可能なデータ品質を実現した。目新しさはないがデータ管理に関する手法を徹底して実施しており、このような施策が、高いデータ品質の実現に効果があるといえるだろう。
  • 欧州有力電話会社では、概念物理一体の統合リポジトリを構築し、生産性の向上に結びつけた。現状の可視化が将来像の策定にもつながった。
  • 英国鉄道管理会社では、システム再構築時に意識改革を行い、データ品質管理の導入に踏み切った。IT部門がデータ管理を最も重要な責務として認識することが重要だろう。
  • 海外でもメタデータ管理は積極的に実践されており、特にデータ分析者が独自の職能とされていることなどに特徴があった。また、広範囲を対象としたデータ管理も成果を挙げており、これらの事例は参考にされるべきであろう。

2. XML標準化におけるdata(意味)共有へのアプローチ

日立電線株式会社
松川 信也 様

国際的な標準化活動、特にデータの意味の標準化と、意味共有に関わる概念であるオントロジーについてご紹介いただいた。

  • 国際的な標準化は、国内標準などへの適用の義務付けがなされるなど、企業活動にも影響を及ぼすようになってきている。日本も国際標準化活動をリードしていくことがグローバル戦略上重要である。
  • ISO11179では、データ要素の命名、その型について取り決めが定められている。
  • オントロジーでは、基本概念や概念間の関係について詳細に吟味する。このような分析は、データを管理・整理し広域データ連携を行う場合にも検討されるべきだろう。

3. グループ&グローバル経営に貢献するITソリューション

ヤマハモーターソリューション株式会社
渡辺 卓哉 様

国際的な体制づくりやDOA推進などの活動成果と、今後のヴィジョンをご紹介いただいた。

  • 中国、インドの現地法人で、ブリッジSEを通さずに日本語でコミュニケーションできるようにするなど、国際的な経営環境に対応できる体制、チーム作り、ガバナンスを行ってきた。
  • グループ全体のシステム化には、全体のデータベース構造を明らかにすることが不可欠である。そのためには、共用資源データの設計、開発を最優先に行うべきである。
  • これからは、DOAに加えOODの要素も取り入れ、保守性、移植性の向上、システムライフサイクルの長期化に取り組むことが課題だろう。

4. 経営力を強化するIT活用方法の研究 総括

株式会社データ総研
長谷川 泰司

今回のセミナーの内容を概観し、これからの情報システム部門の環境や役割について考察した。

  • 情報システムは組織の外にまで広がりつつあり、トラブルが広く一般社会へ影響を及ぼすことが増えている。
  • 海外の動向や、ヤマハモーターソリューション様の事例からは、長期的な視野で地道に、正攻法でのアプローチをとることが有効といえるだろう。また、国際的な意味の標準化にも、情報システムの開発や運用業務では配慮すべきだろう。
  • 情報システム部門には、業務目的を達成するシステムの実現、一般社会に対する責任、ノウハウ・スキルの向上が求められている。

プログラム


9:30〜9:40 セミナー開会のあいさつ
  【第1部】第23回 データベース特別研究会
9:40〜12:30

1. 〜システム開発の動向と2007年の総括〜

(株)データ総研 DRIフェロー
椿 正明 -Masaaki Tsubaki-

わが国の意味論データモデル研究者の草分け。1985年(株)データ総研を創設。PLAN-DBを中心としたDOAコンサルティングを展開。主著に「データ中心システム入門」「データ中心システムの概念データモデル」「データ中心アプローチによる情報システムの構築」、「名人椿正明が教える〜」シリーズとして、2005年に「データモデリングの技」を出版。2006年に「システム分析・モデリング100の処方箋」、「帳票分析50のケーススタディ」を出版。工学博士。

  • 第3世代マスター統合を指向するアメリカ
  • 先進ユーザ、SOAに果敢に取り組む
  • CRMから浸透し始めたSaaS
  • 開発はIT指向からビジネス指向へ
12:30〜13:15

昼食

  【第2部】経営力を強化するIT活用方法の研究
13:15〜14:45

2. 世界のデータ管理手法の動向と先進企業の事例紹介

(株)データ総研 代表取締役社長
黒澤 基博 -Motohiro Kurosawa-

データアーキテクト。DOAメソドロジスト。1984年システムエンジニアとして共同利用型バンキングシステムの設計・開発に従事。 1988年(株)データ総研入社。データ中心システム設計のコンサルティングを始める。電力・通信・製造・化学・建設・運輸・金融など数多くの業界におけるデータ構造設計に携わる。1993年から業務アプリケーション全体最適化のコンサルティングも手がける。2000年に代表取締役社長就任、現在に至る。主著に「データ中心のエンタープライズアーキテクチャ」がある。

(株)データ総研 シニアコンサルタント
藤原 紀章 -Noriaki Fujiwara-

信託銀行・鉄鋼会社系ベンダー・総合電気メーカ系ベンダー・金融系シンクタンク・ネット証券会社を経て、2007年データ総研入社。一貫して銀行・証券業界のデータ管理、システム構築に従事。あらゆる銀行・証券業務に精通。

  • 弊社メンバより、IRM UK主催「2007 Data Management and Information Quality Conferences」の参加報告
  • 米国地方銀行-BISⅡの信用リスク管理を契機に全社モデルを完成
  • 欧州電話会社-数万項目のデータを保有するレガシーを10ヶ月で可視化
  • 成果を挙げている「データ品質管理」-導入から10年 手法として定着-
15:05〜15:55

3. XML標準化におけるdata(意味)共有へのアプローチ

日立電線株式会社 IT業革推進本部 業革推進室 エキスパート
(次世代電子商取引推進協議会 委員、ものづくりAPS推進機構 委員)
松川 信也 -Shinya Matsukawa-

1982年(/04)日立電線(株)入社、営業企画・営業を担当
1990年(/03)情報管理室、生産・営業システムの設計・開発を担当
2000年(/07)業務革新推進本部、全社BPRの企画・推進を担当
2004年(/11)日立製作所IT戦略室へ出向、日立グループIT戦略の立案を担当
2007年(/04)より現職、新基幹システムの導入に参画

  • 以下の2団体の活動におけるdata(意味)共有へのアプローチについての報告
  • XMLによるEDI(ebXML)の国際標準化団体UN/CEFACTと連携する日本のECOMの活動から
  • OASIS標準を含む製造業の標準モデルを目指すAPSOMの活動から
16:05〜16:55

4. グループ&グローバル経営に貢献するITソリューション

ヤマハモーターソリューション(株) 常務取締役 経営マネジメントセクター長
渡辺 卓哉 -Takuya Watanabe-

1974年ヤマハ発動機入社。情報システムの企画・開発・運用の全般に携わり、特に全社のシステム化計画、システム開発方法論の導入、経営革新プロジェクトにおけるIT企画などのテーマに取り組んだ。 2000年に情報システム室長。 2001年から、Yamaha Motor U.S.A.へ出向、Senior Vice President として経営企画・財務・人事・IT部門を管轄。 2006年に帰任しヤマハモーターソリューション(株)に勤務。

  • ヤマハ発動機のグローバルITガバナンス方針と、ヤマハモーターソリューションの役割
  • DOAに基づくグローバルマスターデータ統合と共通システムの展開
  • DOA+OODベースの開発方法論導入による新グローバルERP構築
17:05〜17:30

5. 総括

(株)データ総研 取締役副社長
長谷川 泰司 -Hiroshi Hasegawa-

1969年千代田化工建設(株)を経て1985年(株)データ総研入社。創設時のメンバーの一人として数多くのプロジェクトに関わる。建設・電機・医薬・金融・食品・不動産・機械・化学・通信・石油・電力の業界でコンサルティングを実践し、生産管理・流通・工事系の業務に精通する。

  • 各ご講演から、経営に貢献する情報システム/情報システム部門の今後について考察
  • ITが経営の死命を制する
  • 海外のデータマネジメント動向と日本の状況
  • ITガバナンスにおける標準化の役割
  • 経営を強化するITガバナンスとは
17:30〜17:40 全体質疑応答、セミナー閉会のあいさつ
17:45〜19:30 情報交換会 ※別室にて軽食とお飲物をご用意しております。

開催概要

名称 2008年冬 第23回データベース特別研究会
〜システム開発の動向と2007年の総括〜
経営力を強化するIT活用方法の研究
会期 2008年2月8日(金)
会場 アイビーホール青学会館

【第1部】第23回 データベース特別研究会 〜システム開発の動向と2007年の総括〜

今年で23回目となる「データベース特別研究会」は、DRIフェロー 椿正明が、日頃から目を通している国内外約400もの文献を整理し、情報システムに関するトレンドを独自の視点で発表いたします。今回も、椿正明が2007年の動向・今後の展望について熱く語ります。

今年は、BI, SaaS, MDM, CDI, SOA がキーワードのようです。

  1. 第3世代マスター統合を指向するアメリカ
  2. 先進ユーザ、SOAに果敢に取り組む
  3. CRMから浸透し始めたSaaS
  4. 開発はIT指向からビジネス指向へ

【第2部】経営力を強化するIT活用方法の研究

連結経営や株式の時価評価の一般化など、急激なビジネス環境の変化を背景に、企業価値をどう高めるかは多くの企業に共通する課題となっています。

マーケットは益々海外へと広がり、経営も単体から連結へとシフトし、情報システムは否が応でも広域流通・全体最適を求められる方向です。

しかし、日本の多くの企業が課題と感じつつも、レガシーの重圧から、なかなか戦略的IT活用に至れずに、苦慮されているのではないでしょうか?

第2部では、国内外の動向や企業の取り組みのご講演を通じ、経営に貢献する情報システム/情報システム部門の今後について、次のような側面から皆様と共に考えていきます。

  • 国内外の情報技術の動向・トレンド
  • どのような技術や標準を取り入れるべきか
  • 企業のグローバル&グループ化の進展に適応したITガバナンスとは

こんな方にお薦め

  • 情報システム部門の管理者や企画部門の方
  • 情報システム改革に携わられている方

など、情報システム開発に携わられている方を広くお待ち申し上げております。

※本ページに掲載されている所属、役職等は開催当時のものとなります。