弊社は長年データモデリング教育を行っていますが、その方法は大きく2つに分かれます。1つは、お客様の実プロジェクトにレビュワーとして参画して行うOJT型の教育です。主にプロジェクトメンバが作成したデータモデルのレビュを通じて行う教育で、データモデリングプロセスの指導を中心に、文法やモデルパターン等を解説します。それに加えて、データモデリング時のヒアリングポイント、課題抽出観点の説明や、解決策検討ディスカッションの空中戦回避などのテクニック指導を行うこともあります。
もう1つは、弊社コンサルタントが講師を務める講義型の教育です。(先号で触れた『データモデリングの基礎・演習コース』などがその例です。)教育は、主に教材の説明と演習を通じて行われますが、そこに講師の知見や事例などを補足して進めます。ちなみに、弊社にて行う定期開催と、お客様先にて行うオンサイト開催がありますが、特別な依頼がない限りは同等の内容で行っています。
双方の教育方法にはそれぞれメリット、デメリットがあります。OJT型の教育のメリットは実践的であることです。実プロジェクトに必要なナレッジを必要となった場面で適時提供することができます。「活きたナレッジ」を得るには適した教育方法だと言えます。一方で、ほぼマンツーマン的な教育になるので、教育対象が多い場合には適さないというデメリットがあります。
講義型の教育では、それが概ね反対になります。講義型のメリットは、目的に合わせ体系化されたナレッジを、一定数の人数に対して同時に効率良く、かつ比較的ローコストに教育できるところにあります。教材が製本化されているので復習しやすい点もメリットとして挙げられます。一方で、講義型教育は実践的とは言い難く、たとえ講義内に演習があったとしても実際のプロジェクトと比べると緊張感が違います。有名な「70:20:10の法則」にもありますが、人の成長において実践経験の占める割合は非常に大きいため、得られたナレッジが活きるか否かは、講義で学んだことを実践する場を用意できるかにかかってきます。これが講義型教育のデメリットでしょう。
筆者は、人材教育の理想は「講義で得たナレッジを現場で実践し腹に落とす+その反復」にあると考えます。講義型教育を「受講者があくまでもスタート台に立つためのもの」と位置付け、実践の場でOJT型を組み込みステップアップさせることが望ましいです。せっかく弊社の講義型教育を受講して頂いても、実践現場が作れなければ効果は半減します。そして、その期間が長くなればなるほどゼロに近づいていきます。組織的に業務としてデータモデリングを位置付け、小さなプロジェクトでも良いので実践経験の場を増やすことが重要なのです。
とはいえ、それが難しいというお客様を想定して、現在弊社では今まで以上に実践的な教育コースを作ろうと奮闘中です。皆様に提供する準備が整いましたら改めてご案内させていただきます。