DMBOKとは
DMBOK(Data Management Body of Knowledge)は、その名のとおり「データマネジメントの知識体系集」として、データマネジメントの専門家や組織がデータを効果的に管理するための指針として利用されています。これまでに1st Edition(2009年)、2nd Edition(2017年)、2nd Revised Edition(2024年)の3版が発刊されています。
1st Editionは、「データマネジメント」という言葉がまだ日本ではあまり馴染みのない時代に発刊されました。当時は「重要なことが書かれていそうだけど、非常に読みにくい」「内容が頭に入ってこない」といった声も多く、データの専門家たちの苦労している姿が思い出されます。しかし現在では、データ関連の仕事をしている方であれば、この書籍の名前を知らない人はいないほど知名度が向上しています。
1st Editionから2nd Editionへの進化
1st Editionでは、データマネジメントの重要性を広く認識させることを目的に、基本的な概念やフレームワーク、マネジメントプロセスを提示した点に大きな価値があります。当時のDMBOKフレームワークは「データマネジメント機能」として定義されており、「データを適切に管理するためには10個の機能が必要である」ということを体系的に整理し、提示したことが大きな進展でした。
当時、データ総研では独自のデータモデリング手法を用いて、情報システムのデータ流通や配置の最適化を支援していました。具体的には、エンタープライズデータモデルの設計、概念・論理データモデルの設計支援、マスタデータ管理やメタデータ管理の実現などを行っていました。しかし、DMBOKホイールに照らし合わせると、データセキュリティ管理やデータ品質管理、ドキュメントとコンテンツ管理などの領域が支援対象から抜けていることに気づかされました。このように、DMBOKは多くの企業がデータマネジメントを実践する際に、どの機能ができていて、どの機能を補完する必要があるかをアセスメントするための有用なツールとなっていました。
2nd Editionでは、データマネジメントのニーズや技術の進化に対応し、初版を大幅に改訂しました。DMBOKフレームワークも「データマネジメント機能(Function)」から「データマネジメント知識領域(Knowledge Area)」へと変更され、10機能から11知識領域へと変更されました。
1st Editionが「データマネジメントの実践にはこの機能を実現しなさい」という指針を示していたのに対し、2nd Editionでは「データマネジメントの実践にはこういった知識をしっかりと身に着けて取り組む必要がある」という、より柔軟で包括的なアプローチに変わりました。この変化には、「この分野はまだ発展途上であるため、基礎知識をしっかりと理解しておくことが重要だ」というメッセージが込められているように感じられます。
新たに「データ統合と相互運用性」という章が追加されましたが、この章では、APIやリアルタイムデータ統合、データ仮想化などの新しい統合技術が取り上げられ、データ相互運用性の重要性が強調されています。
全体では、データ活用の発展を背景に、データガバナンスの役割やプロセスが詳細化され、データ取扱倫理、ビッグデータ、データサイエンスなど、現代のデータ環境に対応した知識が追加されています。
1st Editionがデータマネジメントの基本的なフレームワークを提供していたのに対し、2nd Editionはデータに関する最新の技術や規制、業界のトレンドを反映し、より実践的で包括的な内容に進化したと言えます。
2nd Editionから2nd Revised Editionへ
2nd Revised Editionでは、主に内容の不整合や不正確さに対する改訂が行われましたが、「データ品質管理」の章については特に見直しが図られています。例えば、2nd Editionでは「高品質なデータを提供すること」が前提とされていましたが、Revised Editionでは「そもそも高品質なデータとは何か」を定義することから議論が始まるようになりました。これは、「品質の基準は立場や状況によって異なる」という考え方を反映したものです。
DMBOKを理解するために
DMBOKはデータマネジメントの参考書として非常に有用ですが、書籍が厚く、内容に専門用語が多いため、理解するには相当の時間がかかります。
学習のポイントとしては、身近な事例に置き換えて考えることが挙げられます。例えば、データアーキテクチャを「人材の配置や業務連携の設計」に置き換える、マスタデータ管理を「各部門で異なる業務用語を標準化し、統一認識を持たせる作業」に置き換える、データ品質を「従業員の業務の質を把握し、向上させる取り組み」に置き換える、といった方法です。
人材管理とデータ管理はどちらもマネジメント業務であり、共通点が多くあります。このように身近な事例に置き換えることで、DMBOKの内容をより理解しやすくなるでしょう。ぜひ試してみてください。