はじめに ~データアーキテクチャと活動について解説~
社内に存在する膨大な量のデータを管理・活用する際の指針となるのが今回紹介する「データアーキテクチャ」です。データマネジメントを行う企業は、まずデータアーキテクチャを設計し、それを実現するために計画的な取り組みを続けていく必要があります。
MDMやDWH/BI、データ品質等と比べてあまり広く知られていませんが、データマネジメントにおいてデータアーキテクチャはとても重要です。DMBOK2(データマネジメントの知識体系を記載した書籍)の中でも、データアーキテクチャはデータマネジメント知識領域の一つとして扱われています。(そもそも“データマネジメントとは?”“DMBOK2とは?”という方は、こちらの記事『データマネジメントとは何か』もご覧ください。)
本記事では、データアーキテクチャとそれにまつわる活動について、弊社の知識・経験をもとに簡単に解説します。
想定読者層
本記事は、以下の方々を想定して作成しております。
- データアーキテクチャについてかいつまんで知りたい方
- デジタル化に取り組む上で、データアーキテクチャの意義を理解したい方
データアーキテクチャとは?
DMBOK2では、データアーキテクチャを以下のように定義しています。
企業の(組織構造に関係なく)データニーズを明確にし、ニーズに合うマスターとなる青写真を設計し、維持する。マスターとなる青写真を使ってデータ統合を手引きし、データ資産をコントロールし、ビジネス戦略に合わせてデータへの投資を行う。
--『データマネジメント知識体系ガイド 第二版』DAMA International編著、DAMA日本支部・Metafindコンサルティング株式会社訳、日経BP社、2018
上記の定義や、関連する活動内容などを踏まえて考えると、データアーキテクチャとは
将来的に、どういったデータをどのように取得・保持・活用するかの青写真であるといえます。
なぜアーキテクチャを設計するのか?
もしデータアーキテクチャが設計されていない場合、企業全体でデータがどうあるべきかがわかりません。そうなると、データマネジメント活動が場当たり的になってしまい、企業全体で見たときに様々なムダが発生してしまいます。例えば、似たようなデータを重複して作ってしまうことでデータの開発・維持コストが増加してしまったり、同じ形式にしておきたいデータをバラバラな形式で実装してしまうことで本来必要ない変換作業が発生してしまったり……といった事態が発生するおそれがあります。
データアーキテクチャを設計し、それをもとにデータガバナンスを行うことで、データマネジメント活動の個別最適化が防がれ、企業全体で一貫したデータの統合・標準化を行えるようになります。
データアーキテクチャ設計の成果物
繰り返しになりますが、データアーキテクチャは「どういったデータをどのように取得・保持・活用するかの青写真」です。すなわち、「どういったデータがあるか」「どのように取得・保持・活用するか」をドキュメントとして表す必要があります。そのため、データアーキテクチャ設計においては以下の2つを作成する必要があります。
1.エンタープライズデータモデル
企業全体でどんなデータが存在するかを示すドキュメントです。データの標準的な名称や定義が記述されます。また、データを保持しているシステム・業務や、データ同士の関係性も示されます。
図1. エンタープライズデータモデル例
2.データフロー図
企業の中で、データがどう移動するかを示すドキュメントです。データがどこで発生し、どこに渡されていくのかを、システムや業務領域などとマッピングする形で記載します。
図2. データフロー図例
データフロー図に関して補足
実際のところ、図2で示したような全社レベルのデータフロー図のみを指して「データアーキテクチャ」と呼ぶことも多いです。
相手がどの意味で「データアーキテクチャ」を使っているかについては、適宜確認を取りながらコミュニケーションを取りましょう。
データアーキテクチャに関わる活動
データアーキテクチャ設計~実現までの取り組みは、多くの場合、以下のような流れで進みます。
1. システムの設計ドキュメントを収集し、必要に応じて更新する
既存のシステムに関するドキュメントを集めます。(データモデルやデータフロー図が整備されていなかったとしても、テーブル定義書等のドキュメントはあるはずです。)同時に、集めたドキュメントの内容が正確かどうか、内容にヌケモレがないかを確認します。必要に応じて内容を更新します。
2. 業務ニーズをもとに、データ要件を抽出する
業務ニーズを把握し、企業にこれからどんなデータが必要になるかを洗い出します。外部/内部環境の変化に伴って必要なデータも変化します。データアーキテクチャを設計する際には、既存のデータについてだけでなく将来必要なデータについても考える必要があります。1と並行して行っていきましょう。
3. データアーキテクチャを設計し、実現に向けたロードマップを作成する
収集したドキュメントをもとにエンタープライズデータモデルやデータフロー図を書いて、データアーキテクチャを設計します。そして、データアーキテクチャ実現に向け、業務ニーズや、企業の外部環境、社内で使えるリソースを考慮しながら、3~5年先までを見越したロードマップを立てます。
4. データアーキテクチャ実現のために個別プロジェクトに対して要件を伝え、管理する
データアーキテクチャを実現するためには、個別のシステム開発プロジェクトに対して働きかけていく必要があります。システム開発プロジェクトが立ち上がる際には、必ずデータ取得元やデータ品質等、データに関する要件を伝えます。そして、要件が最大限守られるように管理します。
おわりに ~データアーキテクチャを設計する人材育成~
弊社では、データアーキテクチャを設計して守っていくための人材であるデータアーキテクトや、データアーキテクトが必須でもつべきスキルであるデータモデリングに関する研修、無料ウェビナーを行っております。データアーキテクチャに関して困りごとがあれば、是非ご検討ください。
データアーキテクチャの参考情報
デジタル組織に欠かせない、データアーキテクトを徹底解説!
2025年の崖を飛び越えろ!DX時代のデータ活用に求められる
データガバナンスセミナー
データを正しく利活用するためには、適切な方法で「データガバナンス」を行う必要があります。しかし、これまでデータは業務部門とIT部門の間にまたがる形で放置され、誰がガバナンスするのかさえ曖昧になっているケースも多く、「一体どこから手をつけたら良いのかわからない」という声がよく聞かれます。
本セミナーでは、データ活用におけるデータマネジメント・アセスメント事例をベースに、データ活用をしていく上で何をガバナンスしなければいけないかをお話するとともに、実際どのようにガバナンスすればよいのかを、データガバナンスに特化したツールとあわせてご紹介いたします。
データアーキテクチャ設計に必須のデータモデリングスキルを習得
データアーキテクチャ設計に不可欠となるデータモデリングを初歩から学べる研修コース「データモデリング スタンダードコース 入門編」。これまで延べ15,000人以上もの方々がデータ総研のデータモデリング教育コースを受講しています。
データアーキテクト養成コース
データを活用するためにはデータマネジメントが欠かせないという認識が広まるにつれ、その推進役となるデータアーキテクトの必要性がますます高まっています。しかしながら、データマネジメントを体系的に理解し、実施すべき施策・活動を組織として実践できる人材はまだまだ限られています。
本コースでは、データマネジメントの全体像及び、実施すべき施策・活動を押さえたうえで、施策や活動の目的や位置付けと、そのために必要な観点や基本フレームを中心に学習していきます。随所で小演習をはさみながら、具体的課題への対応方法を体験していただき、データアーキテクトとして活躍できる人材の育成を図ります。
データアーキテクトとなる当事者だけでなく、組織・顧客にデータマネジメントの推進を促す立場の方、データマネジメントの全体像を把握したいSEの方などにも必修の内容です。