最近、多くのお客様から「データマネジメントができる人材をどのように育成すれば良いのか?」というご質問をいただきます。データ総研としては、いままでの経験を活かし、各企業の事情にあわせたデータマネジメント人材像やカリキュラムをご提示していますが、業界全体としての対応が望まれます。
そもそも、なぜこういった質問が多くなってきたのでしょうか?
理由は2つ考えられます。
第一にデータマネジメント人材を自社で育成したいと考える企業が多くなったことが挙げられます。ビッグデータの活用などでデータセントリックな組織を確立しようという機運が高まってきたことが背景にあると思います。また、私の実感では、こういった流行りとは関係なく、グローバル経営・グループ経営のために広い範囲のデータ統合が必要になり、データガバナンス組織の必要性が高まったためと認識しています。
第二に標準的な人材像や育成カリキュラムがIT業界に存在しないことです。たとえば、情報システムユーザースキル標準(UISS)で提示されている人材像とDAMA-DMBOKに紹介されている人材像を比較してみると、その違いが良くわかります。
UISSの人材像
- ビジネスストラテジスト
- ISストラテジスト
- プログラムマネージャ
- プロジェクトマネージャ
- ISアナリスト
- アプリケーションデザイナー
- システムデザイナー
- ISオペレーション
- ISアドミニストレータ
- ISアーキテクト
DAMA-DMBOKの人材像
- 執行役データスチュワード
- データアーキテクト
- ビジネスデータスチュワード
- データベース管理者
- データモデル管理者
- データアナリスト
- データクオリティアナリスト
- メタデータスペシャリスト
(厳密に言えば、DAMA-DMBOKの場合は役割名で表現されており、これ以外にも沢山の役割名が存在します)
それぞれの人材に要求されるスキルは、前提としている作業の違いからきています。すなわち、システム開発ライフサイクルで求められるアクティビティとデータマネジメントライフサイクルで求められるアクティビティが異なるためです。
あるユーザ企業で、データマネジメント人材を定義することを想定してみましょう。まず最初に、DAMA-DMBOKで説明されている役割名から、自分の企業にあったものを選択します。DAMA-DMBOKのままでは、役割名が細かすぎて日本の文化になじまないからです。また、DAMA-DMBOKに提示されている10のデータマネジメント機能すべてに取り組むわけではないので、その企業が必要とするアクティビティに絞った人材像を描くことになります。その一例を紹介すると、次のようになります。
- グローバルデータガバナンス担当
- サブジェクトエリア別データガバナンス担当
- プロジェクト別データマネジメント担当
- データクオリティマネジメント担当
これらの人材像を設計する上で、重要な視点は次の4つになります。
- グループ全体/サブジェクトエリア別/リージョン別/企業別
- 戦略レベルの担当/プロジェクトレベルの担当
- 利用部門側/システム部門側
- ガバナンスする側/ガバナンスされる側
いずれにしても、現在のところ標準的なデータマネジメント人材像や育成カリキュラムが無い状態で、本気で取り組む企業は、独自にこれらを定義し教育コースやOJTを実施しているというのが実態です。