DRIブログ

金融業界共通語彙がフィンテックをつなぐ

業界動向/法規制
Business shaking hands in front of modern building with copy space (selective focus)

前回もお伝えしたとおり、5月中旬に、弊社はロンドンの国際データマネジメントカンファレンス(IRM UK※)に参加しました。会食の場でロンドンっ子と雑談していたとき、EU離脱の国民投票の話題がでましたが、その場の全員が「離脱はありえない」と言っていました。それがまさかの離脱決定。離脱決定直後には、金融業の都たるロンドンはどうなるのかという不安のツイートが、飛び交っていました。今回は、そんなロンドンの未来にも影響するかもしれない、金融のお話です。

2007年の金融危機以来、世界の金融業界はリスクマネジメントのために、多くの規制や法令の見直し・追加を受け入れ、その遵守を求められています。しかし、国際/国内/業種別に様々な規制が導入された結果、逆に、金融業のリスクマネジメントは各規制の専門家以外には不明瞭なものになってしまいました。

一方、金融業界ではIT技術の導入が進み、フィンテックと呼ばれるムーブメントが浸透しつつあります。現在のフィンテックの主流のひとつには、他の業界と同じく機械学習技術とAIの応用があります。しかし、こちらも言語/業種に閉じた範囲での応用にとどまっており、株取引と不動産を結びつけるようなサービスはなかなか生まれていません。

両者に共通するボトルネックは、地域や業種を横断する、共通語彙が定義されていないことです。たとえば、企業において「取引先」や「発注」ということばの定義は、部門によって異なります。企業単位では、事業単位に分かれたことばの意味定義とその関係性を整理することで、全社横断の統一したビジネスを進めることができます。業界全体のリスクマネジメントと事業横断サービスが求められている金融業界では、いわば、業界標準のことばの意味定義とその関係性を管理する必要があるわけです。

こうしたニーズを受けて近年注目されているのが、欧米の金融機関が主体となって作成しているFinancial Industry Business Ontology※(FIBO、金融業ビジネスオントロジー)です。金融業界で共通して扱うエンティティとその関係を整理しており、全世界標準の語彙集だと捉えていいでしょう。概念レベルのリレーショナルデータモデル図も用意されています。

※FIBO作成を推進するEDM(Enterprise Data Management Council)のプロジェクトWebサイト

http://www.edmcouncil.org/financialbusiness

このFIBOと各種規制/法令の語彙を紐付けすることで、より明確なリスクマネジメントの実行を試みている企業が、既に出てきています。機械学習やAIサービスのためには、機械に「正しい答え」を教える必要があります。FIBOを標準として機械学習を進めることで、業種を横断したサービス提供が可能になります。また、ビットコインに代表される、各種ブロックチェーンサービス間での取引を、FIBOを介在させることで実現させようという試みも進んでいます。

これまでロンドンが金融の中心だったのは、EUの金融規制・法令と、それに基づく権利が認められていたからです。EU離脱によって、それらを失う可能性が出てきたわけです。ですが、FIBOのような世界共通の標準作成が加速するなら、ロンドンはこのまま世界の金融業の中心であり続けるかもしれません。

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